新建築住宅特集6月号に設計監理に携わった「前後の家」が掲載されています。
独立後の事務所名で初掲載です。
今号は「木造の可能性」という特集タイトルの木造特集。
木造の「可能性」とありますが、スーパー木構造のような一見木造に見えない技術でなく、在来工法の範囲に収まる技術を用い、その素朴な架構の分節や意味をずらすことによって独自の空間を生み出している作品が多いと感じました。
そういう意味で今回の特集には、いわゆるエンジニアでもなくデザイナーでもない、名付ける者としての建築家、再定義する者としての建築家、という側面を強く感じます。
木の性能的な限界にチャレンジしていく方向ではなく、木造という見慣れたエレメントの集積にどれだけ豊かな記号的世界を見出せるか。
実はその主題において「木造」は代替可能な主題で必要条件ではないが、やっぱりここは木造でないと面白くなくて、なぜなら木造というのが、一見ありふれた既存の要素に溢れる「読み取られるべき世界」を提示するからだろうと思います。
巻頭の吉村理さんの作品は既存の大和棟の内側に新しい架構を作るという計画で、これはすごい。大工さんは屋根の下で材木の取り回しにも苦労するような状況だろうし…これはよくやったなと。既存と新たなエレメントの間に空間が生じ、それに名前を与える。そのことで既存も新たに加えられたものも再度定義されていく。
巻頭2作目の佐々木さんの竪の家は、実際に体験したこともあり、追体験する感じでじっくり読みました。とにかく構造と空間のプロポーションがすごく綺麗なんです。これはいわゆる雑多な木造世界を再定義する作品ではなく、構造から攻める作品。しかしスーパー系というより削ぎ落とす方向性。木造をえ?っていうくらいシンプルな形で実現しています。仕上げと呼べるものがほぼないのですが、それでも余計なものが何一つない。
佐々木さんの巻頭論文も興味深く読みました。佐々木節からボケとツッコミとアメリカンジョークを削ぎ落とすとこうなるんですね(笑)。
私も精進あるのみです。
あと、角材の筋交い、流行りすぎ(笑)。