カメラをどこに向けても、ファインダーを覗いた瞬間そこに建築がある。
なんなんだこれは…凄い。
それはずっとそこにあったもので、同時に今現れたものでもある。観察者に応じて現れるが如く、フレーミングした瞬間立ち上がるシュレーディンガーの建築。
カメラをどんどん寄せても建築、どんどん引いても建築。
寄っても寄っても情報量が減らない。どこで、どのスケールでフレーミングしても建築。建築のフラクタル状態なのです。
一年以上前ですが、香川の琴平で鈴木了二&吉村昭範の官舎プロジェクトを見学した際のメモ。
備忘録として個人の感想を残しておきたいと思います。
官舎プロジェクトは鈴木了二作品としては一応地味な部類に入るのではないかと思います。
しかし、いや、だからこそ凄みの真骨頂がやっと理解できたという感がありました。見られたのは本当に良かった。
例えば金比羅宮プロジェクト、これはもう圧巻です。大胆な構成かつ皮膚の切れるような鋭さ、迫り来るディテールと緊張感漲る空間。
楽しさとか賑わいとかいった雰囲気は一切排除されて、異次元の、ひたすら建築だけの世界。
動線やゾーニングすら霞み、ひたすら建築。
とまあ凄いのですが、私なんぞが日々追われている仕事とは、シチュエーションも質もお金も桁違いで、自分との距離を計りかねるという側面は否定できません。まさに異次元。
凄いけど凄くて当たり前、でもある。
ちなみに金比羅宮プロジェクトは吉村くんが担当スタッフだったので、ある意味鈴木+吉村体制による作品と言えます。