西尾市指定文化財「実相寺」の復原修理工事プロジェクト。2022年現在、引き続き庫裏の修理工事を行っています。
実相寺は鎌倉時代(1271年)に現在の地(西尾市上町)に吉良氏の菩提寺として創建された臨済宗寺院です。三河の安国寺として戦国時代から江戸時代にかけては大変栄えていました。
1560年に織田氏の手により大きな火災に見舞われ伽藍のほとんどを焼失しましたが、その後1500年代後半から1600年代初頭までの数十年間にかけて現在の釈迦堂、方丈、庫裏が建て直されました。
建築については釈迦堂(県指定文化財)/方丈(市指定文化財)/庫裏(市指定文化財)の三棟が文化財として指定されており、他にも梵鐘や仏像などがいくつも文化財指定されています。
方丈の創建は1600年代初頭ですが、明治7年に元々入母屋だった建屋の両翼を縮小し切妻屋根の姿となっていました。
方丈の復原修理工事は、通常の修繕を行うと同時に瓦屋根を当初の姿である柿葺に近い銅板に葺き替え、更に明治期に縮小された入母屋を復原する工事となりました。
通常、こうした歴史的建築物の修理・復原は現行の建築基準法の適用を受けませんが、今回切妻から入母屋への復原に伴って「増築」が発生するということで、歴史的建築物であるにもかかわらず確認申請を行うという大変珍しいケースとなりました。構造的には限界耐力計算を伝統工法に適用する方法を用いて適判も受け、構造的な安全性を確認しています。
実相寺方丈復原修理工事
復原アドバイザー:岩田敏也
設計担当:吉村真基建築計画事務所
構造設計:桃李舎
施工:田中社寺株式会社